水彩の用語集

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アタリ

アタリとは大まかに形をとる作業のことです。正確な形(デッサン)描くための下作業とも言えます。

まず画面のどの位置に、どんな大きさでデッサンを描き始めるかを決め、極めて薄い線で描いていきます。

納得のいく形になるまでは決して濃い線で描かないことが大切です。

 

色が色として見える仕組み

物が黄色や赤色、青色などに見えるのは、物に色が付いているからではありません。「え、そんな馬鹿な!」と思った人はいるでしょう。私たちが色として感じているのは、実は物の色ではなく、光そのものなのです。光は赤や黄、青なのどそれぞれ異なる波長を持った電磁波の一種で、これが私たの目に入り、脳が感知して初めて色彩と

感じるのです。また物が一つの色として感じる原理についてですが、例えば葉の色が緑に見えるのは、葉が緑色の波長の光を反射する性質を持っており、それが私たちの目に届くからです。それ以外の波長の光は葉の中に吸収されてしまい、私たちの目には届きません。その際に緑の光は100%反射する訳ではなくのではなく、また緑以外の光も100%吸収される訳ではありません。だからこそ「微妙な色合いの緑」に見える訳です。

 

 ウォッシュ 

ウォッシュとは英語でwash、「洗う」という意味ですが、大量の水を使い、まるで洗濯するようにジャブジャブと塗る技法なのでこの名前がついています。たっぷりの水に多量の絵の具を溶いて画面に塗ると、表面張力で膨らんだ状態になります。その際 水の中の絵の具の粒子は均等に分散されているので、濃淡の偏りが殆どありません。更に水は摩擦を軽減する(滑らせる)働きがあるので、筆をスムーズに運ばせることが出来ます。また水のもう一つの特徴として、塗った直後の色の表面は高低差がありますが、暫くすると表面は平になるという性質があります。

以上の3つの性質は美しい色面をつくることが可能なので、透明水彩の基本中の基本と言われています。

 

 

ガッシュ(グワッシュ)

グヮッシュGouache フランス語/ Guazzo イタリア語)は不透明な絵の具またはそれを使った技法という意味があります。水彩絵具には透明水彩絵具と不透明水彩絵具があり、両者の違いは顔料と展色材(主にアラビアゴム)の配合比ににあります。不透明水彩(ガッシュ)は透明水彩に比べて顔料の割合が多く、その分不透明になるので、塗り重ねによって下の色を覆い隠すような表現ができます。透明水彩の色彩が紙の白が反映されたものであるのに対し、不透明水彩は紙の白が反映されない絵の具自体の色彩と言うことができます。

 

グリザイユ

グリザイユとはで灰色を意味するフランス語「グリ(gris)」の派生語で、一般にはモノクロームで描かれた画法またはその絵画を指します。古代ギリシア・ローマで建築の装飾壁画にこの技法が用いられたのが最初と言われ、以来ルネサンス期から近代に至るまでには、かなり画家がこの画法を用いて制作しています。グリザイユの制作手順としては、序盤でグレー調の色で陰影を描き、そこで概ねの立体感を作っておき、あとで光の当たる箇所や物の固有色などの明るく彩度のある色を描き入れます。透明水彩の世界でもこのグリザイユ画法は多くの作家に愛好され、今や特別な技法としてではなく、ごく一般的な画法として捉えられています。

 

 

空気遠近法 

空気遠近法とは、大気が持つ性質を利用して遠近感を表現する手法です。遠方に行くにつれ大気の層が厚くなるので、対象物のコントラスは弱く見え、色はその時の空の色に近づきます。その大気現象を利用・表現した方法で、正に空気感で奥行きを表現する技術と言えます。空気遠近法は古代から使われていたとされていますが、ルネサンス期においてはレオナルドダ・ヴィンチが『絵画論』の中で深く言及しています。

透明水彩でこの手法を使う場合は遠くを極端に淡く描くことで、気持ちの良い遠近感が生まれます

 

 サイジング(にじみ止め)

サイジングとは英語でSizingと書き、 洋紙や繊維品に糊状の物質を加えて繊維の表面やすきまを覆い、液体やインクが滲まないようにする作業のことです。

水彩紙は膠(にかわ)を主体にした溶液(ドーサ液)を紙の表面や中にまで塗布し(浸透させ)、水が染み込み過ぎない、または滲み過ぎないようにしています。この作業によって絵の具の発色を良くする効果もあります。

※劣化に注意:サイジングは紫外線や高温・湿気・カビなどの環境的な影響を受けて劣化することがよくあります。劣化した部分は絵の具を弾かずに吸い込むため、発色が落ちたり、斑(まだら)が出来たりします。

これが謂わゆる「水彩紙が風邪を引く」状態です。

 

スパッタリング 

スパッタリング(Spattering)とは英語で「弾き飛ばす」という意味です。水彩の技法としては、硬い筆や歯ブラシなどに絵の具を付け、それを指で弾き画面に散布する方法があります。素早くドット(斑点)を作ることができる技法として、近年では愛用する作家や愛好家が増えています。また絵の具の量を調節することで、大小さまざまなドットをつくることが出来ます。

 

 ドーサ液

上のサイジングと同じような意味ですが、正確にはサイジングは「滲み止めをする作業のこと」で、ドーサは「滲み止めをする液体」を指す場合が多いようです。

ドーサ液とは、明礬(ミョウバン)を溶かした溶液に膠を加えたもので、和紙・絹・綿布・板などのニジミを止める役割を果たします。この液体を紙の表面に塗布すると、紙、絹の繊維の間にこのミョウバン液が浸透し、乾燥する課程で皮膜を作ります。この皮膜が過度な水の染み込みや滲みを防ぎ、安定した絵の具の定着を実現します。

 

 ドライブラシ

ドライブラシはその名の通り「乾いた筆」という意味で、絵の具を掠れ(かすれ)させる技法です。要領は絵の具を溶く時に水の割合を少なくするか、筆の水気を切ること、そしてもう一つは目の粗い(凹凸のある)水彩紙を使うことです。あとは筆の腹(平筆がおすすめ)で画面を撫でるように描けば、紙の凸部分に絵の具が着き、かすれが出来上がります。ザラザラした物や古びた物の質感表現をしたい時にはとても重宝します。

 

水彩紙が風邪を引く

水彩紙がおかしい、色を塗ると和紙のように吸い込んでいく。これがいわゆる風邪をひいた」状態です。

水彩紙の表面には、膠とミョウバンを水で溶いたもの(ドーサ液)が塗ってあります。

発色を良くしたり、サイジング(にじみ止め)するためです。湿気の多い場所や直射日光の当たるに置いたり、長期間保管することでドーサ液が徐々に剥がれてしまいます。すると絵の具がスッと吸いてしまうだけでなく、弾くところと染み付いてまうところが混在し、ムラが出来やすくなります。

保管方法は食料保存袋や衣類圧縮袋など、ジップ型のビニール袋に入れておくのがおすすめです。

風邪を弾いているか否かを見分ける方法は紙を濡らし、明るいところに翳してみると良いです。

部分的に暗く(透過性があがる)見える箇所があったら、間違いなく風邪をひいています。そうなった場合はドーサ液(サイジング液)を購入し紙表面に塗るしかありません。軽度の状態なら2回ほど塗布すれば甦ると思います。 

 

にじみ

にじみは透明水彩の2大技法のうちの1つ(もう一つはにじみ)です。色を滲ませるには2つの方法があります。1つは紙を濡らし、色を置く方法もう1つは異なる色同志を隣合わせで塗った時、その境目が滲むという方法です。にじみの最大のポイントは水加減とタイミング、それに使う筆の選択です。背景や空など広い面積を彩色する時や、柔らかな画風の絵を描きたい時、或いは水が作り出す表情を作りたい時に便利です。

因みに英語ではウェットインウェット(Wet on Wet)またはウェットインウェット(Wet in Wet)と言います。

※詳しくは講座の2番「にじみのポイントと楽しみ方」、5番「水の作り出す表情を楽しむ」をご覧ください。

 

 

ハードエッジ

 塗った色の外側(端)にできる色の濃い線のことを言います。たっぷりの色を画面に塗ると表面張力を起こし、水が乾いくにつれて色の粒子が端に寄っていきます。完全に乾く頃には色はかなり端に溜まり線のような状態になります。ハードエッジになる原因は色々ありますが、①やや硬めの筆で塗っている  ②塗る色の量が多過ぎる ③鉛筆デッサンの線が濃い、または太い   ④重色をしている

などが考えられます。

 

バックラン

バックランは日本語に直訳すると「逆流」という意味で、水が逆流する現象、またはそれによりできる模様のことを言います。また模様の表情が野菜のカリフラワーに似ていることから、こう呼ばれることあります。

最初の色が少し乾き始めたところで水や淡い色を落とすと、ジワジワと広がって行き、波を打ったような模様や境界線ができます。つまり水量が異なる色同士が接触することによる水現象の一つです。

これを意図的につくることができたら良いのですが、うっかりで出来てしまうことも多々あります。

 

バルール

バルールとはフランス語でValeurと書きます。日本語で色価と訳されます。英語ではValue相当し、価値評価明度等の意味があります。では「色価」とは一体何かですが、色と色との相関関係から生まれる色彩効果という意味合いの言葉です。

少し分かりにくいかも知れませんが、バルールを簡単に言うと「色の強さやバランス」ということです。つまり一つの画面の中で濃淡や明暗、彩度などのバランスが取れていなければ「バールールが狂っている」という言い方をします。あくまでも一つの画面の中でのバランスであり、色自体の(絶対的な)強さを指すものではありません。

 

ぼかし

ぼかしとは塗った色が乾かないうちに、その色の端を水を含ませた筆でゴシゴシと動かし、ぼんやりとさせる技法。水加減(塗る色の量やぼかす筆の水の量)や使う筆・筆の動かし方で様々な表情になります。

この技法を習得することが、透明水彩の上達には欠かせません。

 

※詳しくは講座の1番「ぼかしコツと極意」をご覧ください。

 

 

明暗境界線

物に光が当たると、明るい部分と陰影の部分に別れます。その境目が明暗境界線です。明暗境界線はクッキリとシャープな時もあれば、ぼんやりとしている時もあります。あるいはその周辺がとても複雑に見える時もあります。

物がどのような形をしているか、またどのような質感をしているかは明暗境界線の周辺に顕著に現れます

物の形や質感を表現しようと全ての箇所を一生懸命描こうとする人がいますが、自然な濃淡や実在感を追求しするなら逆効果です。なぜなら明暗境界の周辺は明解な表情をしているのに対し、陰影部分の中は明暗差もそれほどなく、曖昧な表情をしているからです。要するに明暗境界は比較的克明に、それ以外は描き込み過ぎないことが大切です。

 

 

リフティング 

リフティングとは塗った色を筆やティッシュで拭き取る(吸い取る)技法です。リフティングの道具や方法は様々です、筆・ティッシュ・スポンジ・海綿・ガーゼなど、その場面や好みに応じて選べます。方法としては擦る・押さえる・叩くなど、状況に応じて的確な動作が求められます。例えば色がまだ濡れている(湿っている)時に行うリフティングと、色が乾いている時に行うリフティングとは、大分要領が異なります。前者は簡単に色を拭き取ることが出来ますが、後者は色がなかなか取れないことがあり、不用意に力を入れると逆に真っ白に取れてしまうことがあります。また水彩紙によって、リフティングが容易なものとそうでないものがあります。一般的には木材パルプ製の紙は用意で、コットン製の紙は難しい、あるいは殆ど不可能と言われます。