水彩紙の比較

さまざまな紙から学ぶ水の現象

例えばアヴァロンという水彩紙は画面を濡らすと暫くは乾かないという性質を持っています。そのため、水分量を少なめに設定したり、滲みやボカシの作業をゆっくりとすることができます。一方 ホワイト・アイビスという紙は水の浸み込みが非常に早いので、水分量を多めに、更に作業を早く行う必要があります。どちらが優秀な水彩紙ということではなく、その紙に合った水加減や作業が必要です。「私は使う紙が決まっているので、他の紙には興味がない」といことなら勿論それも構いません。私自身は「自分に本当に合っている紙は何だろう?」或いは「モチーフによってこの紙は合っているか否か」ということにとても興味を持っていましたので、大体の銘柄を使って来ました。そのお陰で、水加減や描き方関しては勉強させられましたし、水彩の奥深さや水の性質を肌で感じ取ることが出来ました水彩画を永く楽しみたい方は「紙の旅」に出てみることも良いのではないかと思います。

以下私の主観ですが、各紙の個性(水加減や水の奥深さ)を中心を箇条書きにしましたので参考にしてくださればと思います。

 


アルシュ細目ストラスモア・インペリアル ③ウォーターフォード・ホワイト(ブロック ④ラングトンプ・レステージモンヴァルキャンソン ⑥ホワイトアイビス  ⑦アヴァロン  ⑧ホワイト ワトソン(ブロック)

 

 

アルシュ細目 300g/㎡

色を塗り始めると、強烈に弾かれるような感覚があります。少量の水で描こうものなら

色がかすれ、門前払いされてしまいます。この紙は最初は太い筆にたっぷりの水(色)を

含ませて描くべきなのでしょう。ある程度彩色してくると、ドーザが弱くなるせいか、小筆

でも容易に描くことができます。大きくゆったりと塗り始めて、徐々に小さい作業に入って

行くという手順の王道を強いるように作られているのかと思いたくもなります。とにかく

高貴な紙を目指して作られた紙ということは間違いなさそうです。

 

 

ウォーターフォード・ホワイト(ブロック)  300g/㎡

浸水性・撥水性のバランスはパーフェクトだと感じるのは私だけではないでしょう。

丈夫さや発色も平均以上で、特に色の定着力はアルシュに匹敵するかそれ以上ではないか

と思わせるほど、重色に耐えてくれます。にじみに関してはややぼんやり気味の表情

になるのでバックランやエッジの効いた表情を作りたい方には不向きかも知れません。

 

 

ウォーターフォード・ホワイト(スプリング) 300g/㎡

ブロックと同じ紙と思っている方が多いようですが、性質はかなり違います。

塗り始めは水が素直に浸み込んでくれない印象があります。かと思いきや暫く経つと

ジワジワと浸み込み始め、紙が膨らみ波打ちし始めます。定着力や発色はブロックと

さほど違いがなさそうですが、意外と扱いの困る紙かもしれません。

 

 ストラスモア・インペリアル  300g/㎡

比較的水の浸み込みクッキリめのにじみになり、バックランも奇麗にできます。

定着力もあり にじみを何回でも施せるのは有り難いです。

 

アヴァロン  300g/㎡

水の弾きと浸み込みのバランスが良い紙です。画面を水で濡らすといつまでも乾かないので、

にじみやぼかしをゆっくりと楽しむことができます。色が乾くと多少淡くなりますが、

鮮やかさはそれほど変わりません。郡を抜く紙の白さがそうさせているのでしょう。

 

  

ラングトンプ・レステージ   300g/㎡

水の浸み込みはかなり強いです。色を塗っても塗っても吸い込んで行くので、和紙のように

ぼんやりするのかと思いきや、乾くと色がしっかりと定着しているという不思議な紙です。

この水加減に慣れしてるくると、重色もしやすく深い色合いをつくることができます。

懐の奥深ところまで水を収める印象で、高級紙の威厳を感じます。

 

ホワイト ワトソン(ブロック)   300g/㎡

色を塗り始めると水スーット紙の中に入っていく感じがします。1回目の塗りに関して

は難しいことや問題点が一切有りません。しかし2回目の塗り以降は気軽な気持で筆を運べ

ない印象があります、というのは下層の色が剥がれるのです。重色に関しては相当柔らかい筆

を使いそっと塗らないと、最初の美しさは保てません。しかしにじみは於いてはこの紙に

勝る紙は無いぐらい美しさを発揮します。安定した色の広がりがあるので滑らかな

グラデーション作ることができます。

 

ホワイトアイビス

色を塗った瞬間に紙の中に浸み込んでいき、画面の上水分はあっと言う間になくなります。

ぼかしをしようと、ゆっくり塗ろうものなら色表面は既に乾いており、全くぼかせません。

この紙は多めの水分と速い作業が要求されます。その意味では上級者向きの紙と

言えるでしょう。

 

モンヴァルキャンソン

始めてこの紙を見た時「なんて美しい紙だろう」と一目惚れしたことを思いだします。

純白で目の並びも自然で、表示の300gより厚く見えるので、さぞかし丈夫で描きやすい

紙だろうと想像しました。しかし描いてみたら直ぐにこの紙の難しさに気がつきました。

色を塗り始めると水が紙の上に浮いている感じで、思う様に着色されません。暫く経つ

と紙が蒲鉾のように歪曲し始め、塗った色が流れてしまうことが度々ありました。

しかし今でもこの紙への愛情は捨て切れません。道具の美しさは制作意欲をかき立てる

重要な要素なので。