構図と絵作りについて

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テーマに沿って絵を描く

 

穏やかさ、優しさを表現するには?

ぼんやりの要素を多用する

穏やかで、優しい作風にするには、ぼんやりとした箇所を沢山つくることが肝心です。例えばこの花の絵ですが、背景にぼんやりとしたピンク色や黄色を所々に入れ、柔らかな表情作っています。そして重色の回数を少なくし、余分な筆跡を残さないようにしています。最後は花蕊(シベ)や葉の葉脈の一部を小筆で丁寧に描き、仕上げています。

「クリスマス ローズ」

 

 

 

 

長閑さを表現するには?

穏やかな暖色系で

長閑さを表現するには、まず自分が「長閑だ」「ゆったりしている」と感じる対象物を選ぶ

ことです。そして彩度があまり無い暖色寄りの色を多用すると良いです。

背景の穏やかな色が早春を思わせる

花の陰影に濃い色を置き、コントラストを強めにしていますが、これは快晴の光を連想させるためです。これだけでは長閑な感じは表出できませので、背景を肌色系に彩色し、穏やかな早春のイメージを創出しています。

「麗かなとき」

全体に地味目の色で長閑さを表現

のんびりと落ち着いた雰囲気色になるように、配色に気を使いました。特に低木や背景の緑はパーマネントグリーンNo1+シェルピンクという混色を多用し、温かかく落ちついた雰囲気にしています。

「花匂ふ(鎌倉・瑞泉寺)」


 

 

抒情性を表現するには?

色調やトーンに流動性を持たせる

抒情性とは感情や情緒が現れていること、或いは詩的な趣きがあるという意味です。

例えば嬉しい・悲しい・楽しい・切ない などの気持ちが色調や動き、コントラスト、

といった形で画面に現れていることだと思います。

空は抒情的に描くための格好のモチーフ

朝の湘南の浜辺を描きました。風や波の音を聞いていると、懐かしい青春の思い出が蘇ってきます。空の雲が風で動く様を少しオーバーに描くことで、鑑賞者の視線が動き、何らかの抒情性を感じるように、と考えました。

「朝の浜辺」鎌倉・七里が浜海岸

せせらぎの動きが花の命を抒情的に見せる

せせらぎの中で、睡蓮が揺れ動いています。水に育まれて咲く姿、命の素晴らしさを表現しています。水の流れは縞模を描き入れ、(描写的にではなく)象徴的な描き方することで、詩的で心情的な絵になります。

「水の音・睡蓮」


 

明るい情景を表現するには?

彩度とコントラストを高めに

明るい雰囲気の絵を描くには、明るい光景を描くことは言うまでもありませんが、

色合いとしては彩度の高い色を使い、高めのコントラストを作ることです。また

ぼんやりとさせるよりよりはっきりとした表情を多くした方が効果的です。

赤色が明るさを演出

ゴンドラを漕ぐ人(ゴンドリエ)が船着場で客を待っている。海の青と建物のグレーだけは少し寂しいと思ったので、右側の花に赤を入れてみました。思いの他明るい雰囲気になりました。

「ゴンドリエ達」ベネチア

休日の賑わいを描く

プロヴァンスのにある野外レストランを描きました。人々の賑わいと青い空、オレンジ色の建物など、明るくなるような要素を盛り込んでいます。

「休日の午後」プロヴァンス・ルシヨン


遥かな思いを表現するには?

遠くの風景に

思いを馳せる

人は「遠い風景」に感動を覚えます。それは何故でしょう。大自然や広大さが、大らかでゆったりとした気分にさせたり、遥かな思い、永い時の流れ、人生の旅など連想させるからで

しょう。

 

ノスタルジーを表現するには?

褐色系はノスタルジーの象徴

茶色や焦茶などの褐色系の色で描いた絵は、古い写真を連想させ、懐かしさや郷愁のある作風になります。

 

物語性を表現するには?

点景の人物を入れる

物語性を表現するには人物を入れると効果的です。人が入ることで鑑賞者は「この人物は

何処へいくのだろ」「どんな思いなのだろう」と想像力を掻き立てられます。

それにより自然に物語を感じ、ドラマの一場面を観ているような感覚になります。

人物が鑑賞者の想像を掻き立てる

雪が深々と降る夜、この2人は何処へ帰っていくのだろう。

そんな思いが、哀愁や臨場感を誘うようにと願い

ながら描きました。


 

 

音楽性やリズムを表現するには?

対象物を多方向に配置する

沢山の物をあらゆる方向に向けて配置し、またその物同志や色を時々

連続するように構成するすると、動きやリズムが生まれます。この絵は

枯葉や四角の模様を散りばめて、晩秋の様子を音楽的に表現しています。

「ふゆのうた」


楽しさや可愛さを表現する

小さな対象物を間隔を持たせて配置する

楽しさや可愛さを表現する方法は無数にありますが、ここでご紹介したいのは、小さくて

綺麗な物を沢山並べる方法です。並べることで絵全体が模様のように見え、

楽しさや可愛いらしさを感じます。

沢山の京飴と桃の花を配置して、春が来た喜びと楽しさを表現しています。配色も草色や淡いピンクを多用し、明るさや軽妙さがでるようにしています。

「京飴と桃の花」

つき羽とカルタ、繭玉などを配置して、新春の

慶びを表現しています。


心象性・抽象性を表現するには?

 水の表情を生かし 大らかに描く

対象物の特徴や印象を捉え、水の表情を生かしながら大らかに描くと、

やや抽象性を帯びた作風になります。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠久の時と、雅を表現

心象性や抽象性を絵にするには、写実的に描くことをせず、自分の心や意識の中に現れてくるイメージを絵にします。この絵は奈良の春日大社の灯籠と藤の花をイメージしたものですが、悠久の時を経た、厳かで幽玄な様を表現しようと考えました。特徴的な技法としては石鹸水の泡を利用しています。藤の花色である淡い紫を先に塗り、石鹸水をよくかき混ぜて泡を作り、紫の上に散りばめました。すると紫色に気泡が無数にでき、藤のような質感と、抽象的な表情が生まれました。

 

「いにしえの光」奈良・春日大社

 

 

 

 

 

いや〜、絵作りとは本当に

多種多様というか、表現には限界がない、

そんなことを感じます。

 

それだからこそ飽きないでずっと描いて行ける

のでしょうね。

 

 

 

究極の構図づくり

鑑賞者の視線を促す

鑑賞者の目を楽しませる演出

こちらに背を向け、イーゼルに向かう画家とモデルの少女とが表されている。一説には画家はフェルメール自身、女性は彼の妻とも。この絵の最大の特徴は複雑な画面構成と奥行きだ。画面の左側には柄物のカーテンがかけられているが、これはルプソワールと呼ばれ、手前に物を配置することで、奥行き感が強調される手法。カーテンの奥には、人物・椅子・テーブル・シャンデリア・壁にかけられた地図・などが巧みに配置されており、鑑賞者の目が画面の全てに行くように、を見事に構成されていく。 フェルメール「絵画芸術」

 

では 鑑賞者の目の動きを促すテクニックについて述べていきます。

 

 

鑑賞者の目は次々と違う場所へ

移っていく

この絵でまず最初の目が行く箇所は画家の後姿。

②次はモデル女性です。

ここから絵を鑑賞する人によって、視線が違う方向へ移動するでしょう。

③女性が手にするラッパから後ろの地図やシャンデリアへ→地図からイーゼル、筆を通ってまた画家へ戻る

④女性の裾からテーブルを通って床の模様へ→椅子の足を通ってまた画家へ戻る

 

その後鑑賞者の目は⑤カーテンや、⑥テーブルに置かれた物、それぞれの細部など、あらゆる箇所に視線が移動していきます。

 

 

鑑賞者の視線が目まぐるしく動く構図

北斎の計算され尽くした画面構成が光る傑作。激しく渦巻く大波の形によって、鑑賞者の目はあるゆる箇所へと運ばれる。円を描くような中央の大波、手前の三角状の波、浪に揉まれる3隻の船、それを静かに見守る富士、

など、次々と視線が移動し止まることがない。

葛飾北斎「神奈川沖浪裏」

 

 

 

視線は動き、止まることがない

①まず初めにこの「大波に目が行く方は多いと思います。

②次に富士

 

ここから先は見る人によって様々

③手前の三角状の波→左の船→その上の白波

④右の船→下方の船

更に視線は止まらずに動いて行きます。暫く見てから色調の弱い空(⑤)へ行きます。

 

 

 

 

ほんとうに、絵画は奥深いですね〜!

 

これからは描くだけでなく、様々な作品に

興味を持って行きたいと思います。

 

 

最後に皆さんにお伝えしたいことがあります。

 

「見た通りにしか描けない」から卒業してほしい

 

教室で私が「自分の思ったように描いてください」と言うと「それが難しいのです」

「創造力が無いから」「本物にそっくりに描こうとすることしか出来ない」といった

答えが必ず返ってきます。もっと上手になってからにしたい、そう仰りたいのでしょう。

 

気持ちは分りますが、ずっとそれでは楽しさが半減します。第一本物と同じように

描こうとしても、そう簡単にできることではありませんし、そこに心血を注ぐことに

どれだけの意味があるかは疑問です。

 

それよりも自分が素敵だと思ったり、奇麗だなと感じたその気持ちを表現すること

肝心で、そのためにはどうしたら良いかを考える、それが絵を描くこと、絵作りだと

思います。「まだ技術もないのに、それは出来ません」は理解できますが、絵作り

楽しみながら技術が身に付いていくのが本来の姿です。

技術の向上と同時進行してほしいのです。

 

今から絵作りを楽しんでください、絵を描く本当の意味を感じていただきたいです。

 

 


 

いかがでしたか

 

絵作りとは技術の披露ではなく、心の伝達

ということがお分かりいただけたかと思います。

 

対象物を見て「綺麗だ」「素敵だ」「描いてみたい」

という気持ちがあれば、充分絵作りを楽しむことが出来ます。

 

そして描きたいという思いが強ければ、技術は自ずと向上していきます。

 

上級の腕を持つ人でも、気持ちが入っていなければ、

良い作品は生まれません。

 

技がなくても、心ありきです。

 

皆さんが楽しく描いて、素敵な作品ができることを

心から願っています。

 

講師 福井 良佑